ダンナ様はFBI(田中ミエ)2008年 幻冬舎
1980年代後半、まだバブル時代までもう少しのころ
コピーライター筆者は、打ち合わせのためクライアントである外資系化粧品会社重役が来日しているホテル30階のスイートルムに向かう。そこにVIPガードとしていたのが、後に結婚するジム(FBI捜査官)である。
ネットも普及していない時代での国際結婚、日本での生活のドタバタエッセイかなと思って読んでいくと、いい意味で裏切られる。
5章構成だが、2章・3章は夫ジムによる筆者へのビジネスコーチとも言える内容だった。
「FBI直伝 家庭も仕事も楽しむ10の掟」
「FBI直伝 自分の魅力をアップさせる10の掟」
今の時代なら、ああプロファイリングによる人物想定ねとか予備知識もあるが、夫ジムによるコーチングを受けている当時の筆者の心境は大変だ。
仕事への心構えや、習慣化による意識の向上、これビジネス書だよねのレベルである
「一流のヘアショップへ行き、髪のツヤをキープせよ」
髪のツヤというものに、ダーリンはことのほか気合を入れるようにと言う。それは、いつもプロファイリングの話に出てくる、仕事を頼みたくなる「ゆとり」の表現の一つだからだと。
まさか、この説明と体験のために日本からアメリカのヘアショップに夫婦で渡米するくだり最高です。
「スカートにはいて自転車にのるな」
妻にスカートで自転車に乗らないように説明するジムだが、その流れでファッション誌のページを夫婦で選んで破り取ったりとゴールすれば理由は分かるが途中の妻は????状態である。
(本文のジムのセリフから)
『キャリア・プロファイリングをやってみよう。どんどん写真を見ていって、クライアントとの目で、この女性になら仕事を頼んでみたい、というのを君が選ぶんだ。』
そういってダーリンはどんどんページをめくり、手をとめるとビリビリと破り取る。
『じゃあ、君は何のためにこんなにたくさん保存しているの。自分のファッションに役立てたいから買ったんでしょ。』
『あのね、ただ漠然と見ているだけでは、自分のものにならないんだよ。破くのは痛みを感じるよね。だからこそ、これを決めて、物差しを持って選ぶ。そうやって初めて、誰もが持っている同じ雑誌が、資料として自分のものになるんだよ』
さらに、ページを選んで破いていく筆者にも容赦ない(笑)
迷って動きが止まると、ダーリンは、コンコンと私の肩を叩いて、スピードを要求した。
『頭で考えてはダメだよ。直感を使いなさい。理屈は後から考えるんだ。』
確かに、自分で買った雑誌を破いていくことによる記憶のインパクトは強い。
特に、電子書籍やインスタグラムなどで流し見してるような今、資料として活用できているか改めて考えた。
受け売りの知識からでなく、経験に裏付けられてのプロファイリング指導は分かりやすい。
エッセイとして刊行された本書だが、ビジネス書としても十分楽しめた。
危機管理の最前線FBI捜査官の教育・経験によるものか、20~30年以上前から現在に通じる危機管理能力を如何なく発揮するジム。
エッセイを書いた筆者は微笑ましい気持ちで書いているのだろうが、2020年までもう少しの今、非常に読み応えがある内容だ。